島田英承 製品開発秘話 -01- P・D・S(ポータブル・ダイヤモンド・シャープナー)

* 開発時呼称「ポータブルハンディダイヤモンド砥石」より製品呼称としてポータブル・ダイヤモンド・シャープナー[P・D・S]としました。

* [P・D・S]についてこれまでに頂いたお問合せを基に、開発経緯、粒度の選定基準などへの疑問に出来る限り応えようとまとめてみました。

● P・D・S 開発にあたって・・・

P・D・Sの研磨材には、粒度#230、#600、荒目と細目の2種、JIS規格B 4130に準拠する高品質工業用単結晶人造ダイヤモンドを使用した。メーカーでは更に振るいにかけ、社内独自の選別規定により均質化したものだけがラインに乗るのだ。

そもそも、このコダワリの発端は「深キズ」にあった。

刃物を砥ぎ上げてる時に、不意に「深キズ」を付けてしまう、という経験は、多くの人に心当たりがあることと思う。表示粒度より粗い粒が混入してる場合に起きることが多く、砥ぎが仕上がろうとする時の「深キズ」は、とてもガッカリするもの。この「深キズ」を解決できないか、幾年と模索したのだった・・・。

それには高い技術を持ったメーカーの存在が不可欠。様々なメーカーを当たった結果、出会ったのが全面的に製造を引き受けてくれたアルファーダイヤモンド工業(株)だった。管理の行き届いた環境を持つ工場と、高品質製品を生み出すことを誇りとする優秀なスタッフが、あの忌まわしい「深キズ」のリスクを和らげる砥石の開発、製品化を実現してくれたのだ。

アルファ―ダイヤモンド株式会社














● 研磨剤が練り込みである訳・・・

この、研磨材(人造ダイヤモンド)練り込みへのコダワリは、メッキ電着ダイヤモンド砥石(ヤスリ)などが安価になっているにも関わらず、今更と言われそうでも発売するダイヤモンド砥石のキモとなっている。ひと皮貼付けられたものとは全く異なる使用感、つまり、練り込みによる砥石部分3mm厚が減り切るまで、切削能力が変わらない事が最大のポイントである。この減り方も、従来の砥石の多くに見られる偏摩耗の発生は考えられうる最小限の範囲に抑えられた。

耐摩耗、耐衝撃性を確保出来た経緯に、開発段階で検討された「ダイヤモンド粉末をどう固めるか」というテーマがあった。

石質、金属質、樹脂質ほか、最適な固化方法が同社技術陣によって検討された。選定のポイントは、「砥ぎ味」と「手軽に持ち運ぶ」という使用条件。機械での高速回転ではない、人の手による動きから手に伝わる感触を重視。テストを重ねた結果、アタリの硬い金属質、石質を退け、樹脂質を選択した事で、誤って落としても石質のような割れや欠けが殆ど発生しない対衝撃性を持つという副産物も手に入れる事が出来たのだった。

● 数字を見ると、粗いと思える粒度選択・・・

島田が旧来使用していたダイヤモンド砥石が人工石英への練り込みタイプであった為に、永年使用の偏摩耗と欠けやヒビによって使用不能となってしまった事がそもそも開発のキッカケとなったのだが、この人工石英への練り込みが表示上#400と#800だった。新製品の初期試作はこの#400と#800という粒度のコンビで行ったものの、砥ぎ味、砥ぎ進み具合は、もっと粗い粒度を求められる結果となってしまった。試作とテストを繰り返した結果、製造元、アルファーダイヤモンド工業(株)の規格では#230と#600がそれに相当と判断するに至り、この粒度が選択されたのだった

(注記)
この粒度はあくまで、島田の経験を元に検証、設定した粒度設定であり、全ての刃砥ぎに携わる者の推薦粒度という事ではありません。
そのため、希望粒度に対応するプログラムも用意しています。(別項参照)

● 参考使用方法・・・

#230は、多少の欠け等の修正に対応できる研磨能力を持ちます。
#600は、中目程度の研磨能力を持ちます。

島田の使用方法は、状況に応じて#230で成形、#600で整えた後に、別売のセラミック製スティックシャープナーのザラついた表面を#230で砥ぎ整えたもので「マクレ取り」をします。化粧砥ぎとは異なる、汎用としての毛剃りまでこなせる刃付けが可能です。更なる使いこなしは慣れとウデに依るところでしょう。
(注、セラミックシャープナーは、市販他社製品でも表面が仕上げ向きになっているものであれば、同じ効果が得られます)

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