島田英承 モノ作りを語る
自分にとって、「デザイン」とは、専門の学校等で学ばなきゃいけないものではない、と思っています。なのに、どうして今現在があるかというと、まずは「あんなモノや、こういう形が作りたいな」と思い、そこに向かって進んでいたらこうなった、という感じなんです。
造りたいモノ、必要なモノがある。その中から生まれるのが「デザイン」かな。
・・・「カスタムナイフ」のデザインについて
ナイフって、見て楽しむナイフと実用的に使うナイフがある、と言われています。
私の作品は美術品のような見て楽しむナイフ、と一括りにされる事が多いのですが、実質的には実用を踏まえたものが基本です。もちろんデザインするときには、主な用途として、見て楽しむディスプレイナイフか、実用ナイフかは区別して作っています。どちらにしても、紙の上だけでデザインするのではなく、今までナイフを使った経験の中に近道があるものですので、使うシーンを想像してだったり、握ったときの力のかかり方を考慮したり、製作しながらも使ってみて、もうちょっとこうした方がいいな、ということも確かめながらカタチ創っていくのが私のデザインなんです。
・・・島田英承のデザインとは...?
必ずしも、無理に差別化しようといった意識はないですね。
自然と他とは違うモノが出来上がってきます。例えば、装飾品としてのナイフを創る時も、極力実用に使うナイフという範囲からは逸脱しないで装飾的な要素を入れ込んでいます。例えば魚をモチーフにしたナイフの握る部分に、ヒレのような造形を入れるとします。見た感じでは邪魔になって握れないのでは?、と思うかもしれませんが、握ってみると「あれっ?握りやすいぞ」となるわけです。意外性や、ちょっとした驚きを感じてもらえるデザインを心掛けています。
そういうことが僕にとってのデザインであり、創り出す楽しみですね。
・・・島田英承にとって「モノ造り」とは...?
基本的に作りたい、と思ったものなら何でも作ります。そこにはこだわりがないのかもしれませんね。お客さんの要望にはできるだけ応えたいし、自分で言うのもなんですが、その辺りの柔軟性は他の人には負けてないと思っています。もともとは彫刻が専門ですが、ナイフの面白いところは、使う人の顔が見えるところと、一つの作品に培って来たスキルをふんだんに活かせるところ。彫刻も彫金も、皮革の扱いや絵画だって活かせます。そしてそれらをどう融合させるのか。素材一つでも選び方で仕上がりが大きく変わってきます。思ったものをどう形にするか、そこには終わりがありませんね。
でもナイフにだけこだわっている訳ではありませんよ。これからも興味の湧くモノは手当たり次第、作りたくなっちゃうと思います(笑)。
※2012年2月29日、蔦屋書店代官山にて。